今回の【水底の歌】の中ではほとんど触れられていなかった桐ノ院胤充氏ですが、本当は私の中にいろいろな裏設定があって、この方のことをあれこれと想像して楽しんでいました。

 例えば、悠季が小夜子嬢と出来ちゃった結婚をすることになって、渋々といった態度をしながらも、最初に二人の結婚を許したのは実はこの方だったりして。と思ってました。

 胤充氏は桐院宗という傑物に見込まれて、桐院家の婿養子となったわけですが、彼は義父となった宗氏に対して尊敬とともに超えられないコンプレックスを持ち続けていたのだと思ってます。

 婿として入ったときに、桐院家に対して課せられた自分の義務は何かと考えた時、富士見銀行を上手に経営し更に発展させていく事と、次世代の桐院家の跡取りをもうける事だと思ったのでしょう。

 本来は、圭と小夜子という二人の子供をもうけ、なんとか富士見銀行を順調に経営していったのですから、自分の役目は果たしたとほっとしてもいいはずのところ、圭はゲイに走り、小夜子は富士見銀行の女頭取を目指して猛勉強。・・・・・婚期が遅れる!とはらはらしていたはずです。

 【水底の歌】の中で、圭が亡くなってこのままでは跡継ぎが・・・・・!←いや、その前に圭にはもう跡継ぎを蹴られてたけど。

内心では『小夜子、誰とでもいいから、早く結婚して跡取りを作ってくれ!私の立場が・・・・・!』という気分だったのでは、と考えるとおろおろとしていたはずの彼の気持ちが気の毒やらおかしいやらです。

ところが、予想外にも悠季と小夜子がくっついて、小夜子が妊娠。

 ・・・・・喜んだでしょうねぇ。(笑)

 実は本編の中では、小夜子と悠季が桐院屋敷で暮らしていたとだけしか書いていませんが、悠季は婿養子としてあそこに迎えられたのだと設定していました。

 つまり、「桐院悠季

 音楽家としての名前は「守村悠季」のままですが、戸籍上は桐院となるわけです。

 婿養子同士、胤充氏は悠季と仲良くしていたのではないか、とか、悠季はむしろ姑の燦子奥様の方に気を使っていたのではないかとか思っていました。

 嫁をかわいがる舅の気分。(≧∇≦)

 胤充氏は音楽はあまり興味がなかったそうですけど、悠季のファンになっていたりして、悠季の演奏会にだけは度々足を運んでいたんじゃないかとか考えました。音楽はよく分からないけど、嫁かわいさに。(爆)

 生まれてきた有に対しては、もうべたべた甘々のおじいちゃんになっていて、小夜子の顰蹙をかいながら、おもちゃとか絵本とかを沢山買い込んできたりしたんじゃないかと思います。(笑)

 本来なら息子である圭に注ぐべきだった愛情を、彼への贖罪も込めて孫である有にたっぷりと注ぎ込む。有がだんだん圭に似ていく(当たり前ですが(笑))のですから、更にこの思いは募るわけです。

 圭の水子事件も、深く探っていけば胤充氏の後悔につながっていたのではないかと推測しています。

 もし、あの時赤ん坊を堕さなければ、圭はゲイに走らなかったのではないかと密かに後悔していたと思います。

 二度の女性関係のトラブルを起こしていた圭が、まさか女性不信になって男に走ってしまうとは考えもしなかったでしょう。

 まだ早すぎただけだ。成人後に適当な女性をあてがえばいい。そんな気持ちがあったのかもしれません。

(本編の方でも、この事件が圭の心に暗い影を投げかけ続けて、両親との不和が決定的になっていた事件のようですから。)

 最初に書いたように、悠季と小夜子との結婚に「けしからん!」と言いながら賛成したのは、ここで体裁が悪いとか相手が悪いと反対し、『堕ろせ!』などと言ったら、今度こそ孫の顔が見られなくなるかもしれないと危惧したのが本音だったかなぁと。(笑)

 あの事件を悔やんでも悔やみきれない気持ちが、意識無意識にかかわらず、孫である有に向かうわけです。

 かわいいばかりの孫ですから圭のときのように富士見銀行を継がせなければとか、立派な社会人として教育しなければならないというような義務も責任もないので、周りにさんざんに文句を言われながらも甘やかすんです。(爆)



 桐院家の面々は、有が実は圭であることをかなり早い段階で知っていながら、何も言わずに黙って推移を見守っていたと思います。

 桐院堯宗氏は当然のことながら、小夜子も燦子も暗黙の了解ということ。おそらく叔父である重藤医師も。

 知らぬは婿養子の胤充氏ばかり。一人蚊帳の外。(笑)

 事業のことなら勘が働く胤充氏ですが、こういう心霊関係のことがらにはとんとニブイ。というか、まったく信じてない、現実主義者のようですし。

 きっと有が悠季にまとわり付いているのを困惑しながらみていたのではないかと思います。

 幼い子供の頃は父と子ですからべったりだったとしても別に問題はなかったのですが、成長していくにつれ次第に亡き圭に似てきた有が、万が一のタブー(父と子の近〇相〇)を犯してしまうのではないかという心配でしょうがない。

 はらはらしながらも、口に出して有に警告したりすればやぶ蛇になるとばかりに何も言えない。(苦笑)

 有が留学したいと言い出すと、渡りに船とばかりに急いで海外渡航の手続きをしていたに違いありません。

 かわいいかわいい孫に遠くに行かれてしまうのは本当はとてもつらかったでしょうに。(ノ_・。)



 そして今度は、有と従兄弟同士になってしまったニュー悠季。←新しい名前は後ほど。

 もしかしたら、この二人は圭と悠季のようにくっついてしまうのではないかと、不安に思いながら見ていたのではないかと思います。

 ・・・・・どうしたって、くっつくことになるんですけどね。(;^_^A

 ・・・・・きっと最後まで二人が実は誰なのか、真相には気がつかないまま、胤充氏はこの先も心配し続けるのだろうと思ってます。

 こんな愛らしい人物の話。かわいいとは思いませんか?




・・・・・いえ、私は書きませんけどね。σ(^◇^;)

桐ノ院胤充氏についてのあれこれ

2006.1/25 up
実は、「水底の歌」を書き上げた後に、【桐院タカ宗氏】の名前の字が違っているのではないかというご指摘をいただきました。
調べたところ、どうやら秋月先生ご自身が物語の前半と後半とで漢字を違えているのが分かりましたので、今回は前半の【
尭宗】という字で統一させていただくことに致しました。
ご指摘ありがとうございました!

                    
鈴本ヨシ子